立夫文庫のブログ

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☆ カードローン社会の恐怖。紅葉はいみじくも叫んでます。施政が悪いんじゃ!!!!

    題  名:金色夜叉  
   整理番号:B-69   
    読んだ時:令和2年 81才
            ジャンル:日本文学      
            著  者:尾崎紅葉
            出 版 社:新潮文庫


 内容・感想:
♪♪ 熱海の海岸 散歩する 貫一お宮の 二人連れ ♪♪・・・
ギーコ ギーコと下手なヴァイオリンの音が聞こえてくる物語。
お馴染みの物語です。


しかし、実際に蹴ったのは尾崎紅葉自身だったとは、つい最近知りました。
お宮のモデルは芝の高級料亭の美人芸妓で、名を須磨子といいます。
この須磨子と恋仲だったのが、尾崎紅葉の親友の巌谷君でした。


そこに横恋慕したのが大橋新太郎と言う男で、妻と離縁してまで須磨子に
熱烈に迫り、遂に口説き落としたのです。
怒ったのは紅葉です。
「金に目が眩んだか、売女め!」と須磨子を足蹴りにしたのでした。


因みに大橋新太郎と言う男は、歴とした明治の実業家で、大量印刷の先駆、
博文館の創設により出版界をリードした人です。
またビール業界でも名を馳せた人でした。


この小説の筋書きは今更書きませんけど、当時ベストセラーになったので、
続編、続続編・・・と出てます。
文体は読み難いですが、これでも当時としては会話を挿入して進歩的で
ありました。
また、現代の当用漢字に無いような難しい漢字が沢山使われており、
ルビが符ってありますが、それがまた小さい字なのでハズキルーペ必携です。


守銭奴の鰐淵直行とその嫡子直道の問答が面白い。
これは、紅葉が節理として言いたかった事だと思います。
貫一がお宮と断絶して生きがいを失い、アイスの鰐淵の下で働くように
なった折り、借主の恨みを買って袋叩きになった時のお話です。


貫一があのような目に会ったのも、何れはお父さんにも及ぶ事必定ですし、
もう既に十分お金も貯まったことだし、どうぞこんな商売は止めて下さいと
云う直道に、
お前はこの家業が不正じゃの汚らわしいだの言うが、財を儲けるに
君子の道などと云うのがどこにあるか。
我々がアイスで金を貸す、いかにもアイスじゃ。
しかし無抵当じゃ、だから高利(アイス)なのは当然じゃ。
それを承知で皆借りるんじゃ。
それでも借りなくちゃならんのは、その不正な高利貸しを作った
社会が不正なんじゃ。


成程と思いませんか。
この節理は現在でも脈々と生きています。
利率が高騰しないように法律で上限を定めていますが、
その網目をくぐって、はみ出す業者を摘発する法律事務所が
繁盛している現実がありますし。


だいたいクレジットカードで手軽に金が借りられるような昨今、
ついつい借り過ぎて首が回らなくなる輩を造りがちです。
ですから現社会も決して良い社会と言えません。
主権をリードすべき内閣も、一千兆円を超す国の借金を
減らすどころか、どうすることも出来ずに、次世代送りを
決め込んでいるではありませんか!!