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☆世界の金持ち「ロスチャイルド」はどう云うテクニックで生れたか。

 題名:世界史の十二の出来事           
            整理番号:E-13                
            ジャンル:人 伝
      読んだ時:平成11年 60才  
            著者:中野好夫
            出版社:筑摩書房


内容・感想:
世界史上の十三人の傑出した人物をピックアップしている。
どれもゾーッとするような、野蛮な物語だが、十五世紀後半、
スペインの暗黒史の主役と云えるトルケマーダの犯したことは、
ユダヤ人から見ると、ヒットラーの悪行と並んで、
絶対に許し難いことであった。


時の女帝イサベルを説き伏せて、スペインの要所々々に
異端審問所を設置し、恐怖の隠れユダヤ教信者の摘出を行っている。
・・・222頁 聖者と悪魔


28頁 砂漠の叛乱・・・イギリス人、アラビアのロレンスの
半生とその感情を語っている。
時は1918年頃、第一次世界大戦の渦中、ロレンスは
イラク王ファイザルⅠ世を助けて、ドイツ・トルコと対決していた。

イギリス本国は戦争に勝つためには、何でもかんでも
約束して回っていた。
アラブ軍がイギリスの先鋒となって戦っているのは、
マクマホン協定により、アラブ諸民族に独立国家を
形成することを認め、戦勝の暁には広域の連邦安全保障圏を
造ろうと言う約束に依るものだった。


しかしイギリスはその裏で、サイクス・ピコ秘密協定なるものを、
フランス、ロシアと結んでいた。
それによれば、アラブに関する分け前はホンの僅かで、
英仏露が戦後如何に分け前を取るかを協定しているものだった。
その文書がロシア革命で暴露され、アラブが怒ると、イギリスは
カイロ保障をシリア委員会に与えている。
曰く、アラブが戦武により獲得した地域は、
総て独立国たることを保障する。


現場で本国のために必死で働くロレンスは、
とんだツンボ桟敷であった。
さらに奇妙なことには、その半年前バルフォア宣言で、
イギリスはユダヤ人に対して戦争協力の代償に、
戦勝の暁にはパレスチナの地を与えることを約束している。
まあ、イギリスと云う国は、よくもこんな勝手な約束を
軽薄にも次々とやってくれるよ。
そのせいで、80年以上たった現在も聖地の取り合いで
戦乱が絶えない。
イギリスは自分が勝つためにはなんでもやってのける、
全くどうしようもない国だ。


十二人の男たちは、それぞれに読者を唸らせるが、
もう一つだけ現代にまで続いているお話を取り上げて
終りにしよう。


143頁・血の決算報告書・・・
マイヤー・アムシェル・ロスチャイルド。
ユダヤ人、フランクフルトのゲットー地区に生まれ、
五男・五女の子宝に恵まれ、今日に続くロスチャイルド王国の
基礎を築いた。


時は18世紀の後半、青年マイヤーは、
先ずヴイルヘルム伯に近づいた。
ヴィルヘルムは金儲けのうまい男で、単に諸侯相手に
金を貸すだけじゃなくて、要請により兵隊さんを
にわか仕立てしては貸していた。
それが、戦死でもしようもんなら莫大な損傷金を取っていた。
マイヤーはそんなヴィルヘルムの
銀行業務を独占的に引受けるに至った。


やがて、フランス革命が勃発し、新政権に対し周囲の列強は
対フランス同盟を結び、何度もフランスを脅かしていた。
そんな時、国民的英雄ナポレオンが現れ、破竹の侵略をしていく。

18世紀の終り頃から19世紀初頭にかけてのヨーロッパは、
戦争と云う、血で血を洗う群雄跋扈の裏で、
国際金融業者のウッシッシと噛み殺した笑いが聞こえてきそうな、
黄金時代であった。
そしてマイヤーはそのトップをヒタ走っていた。
かくして、今日のロスチャイルド王国の基礎は創られていったのである。