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☆男顔負け、小股の切れ上がった美人海賊

「村上海賊の娘」 上下巻

   整理番号:B-53
            ジャンル:日本文学
            著  者:和田 竜
            出 版 社:新潮社
   読んだ時:平成27年 77才
内容・感想:
時は16世紀の後半、天正の頃、桶狭間で今川を破った信長は、
破竹の勢いで次々と戦勝を重ねましたが、唯一、この村上海賊率いる
海戦には痛打を食らったのです。


能島村上海賊の京姫(きょうひめ)は、悍婦にして醜女(しこめ)
と云われてましたが、女性の美醜は時代によって、或いは
お国によって等々で見方が異なると思います。
奈良時代には朝鮮系のノッペリおかめ顔が美人とされてましたが、
クレオパトラのように鼻が高く眼が窪んだのが美人と
云われるのもアリなのです。
京姫は、云わば西洋的な美人だったのかも知れません。


物語は一向宗の本拠、大坂本願寺の境内での、
孫市と頼龍の会話から始まります。
孫市は雑賀鉄砲衆千人を束ねる首領であり、
頼龍はご門跡顕如の坊官であります。

兵糧攻めに苦しむ門徒に、毛利家からの支援を頼むべく、
使者を発することになったのですが、
十万石の米を運ぶルートは海路しかありません。
しからば、それを可能に出来るのは、村上海賊に何とか
頼むしかないと云う結論に達しました。
そして、波乱万丈のストーリーは展開して行きます。


一向宗は法然の弟子の親鸞を開祖としております。
「南無阿弥陀仏と一心に唱えれば誰でも極楽往生できる」
と云う有難い教えを信じる門徒は、
喜んで戦闘して死んでいきます。
しかし、親鸞でさえ、本当にそうなのか、
疑問を感じていたと言います。
その事は弟子の唯円が書き記した「歎異抄」の中にも
書かれております。
この事に関して、熱心な一向宗徒の留吉と、京姫との会話で
面白く書かれています。(185ページ辺り)


七五三兵衛(しめのひょうえ)は泉州の海賊にして、
巨漢のバツイチです。
京姫はこの男に共感を覚えます。
しかし、物語はそうはトントンと、うまくは進みません。
木津川口の海戦で、二人は船上で死闘を繰り広げ、
遂に・・・・・・・・・となります。


この物語、小説とは言え、ものすごく多くの資料を
参考にしつつ書かれているので、かなり史実に近いと思いました。