立夫文庫のブログ

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☆酒豪立原の如何にして旨い酒を呑むかのHOW-TOみたいな随筆です。 

            題名:立原正秋随筆集「雪中花」
    整理番号:B-19              
            ジャンル:日本文学
      読んだ時:平成 9年  59才   
            著者:立原正秋
            出版社:メディア総合研究所


内容・感想:
この本は既に若くして他界した父を記念して、
彼の子供達が編纂出版した本であり、
水天宮の交差点の角に新しくオープンしたPISMO
と言う本屋に行った時を記念して私が買った本です。


私は立原という男を、もちろん彼の書いた書物を
通してですが、好きでした。
呑ん兵衛の哲学・・酔い心地の素晴らしさが
ピンピンと伝わって来ますが、しかし決して
取り乱すことがない・・男です。


鮮魚の旨い鎌倉に棲み、それを七輪で焼いて、
一升壜を風呂に抱えて入って、
嫋やかな人肌加減になった酒を
グビグビやりながら、ウーン最高!なんて云いながら
過ごしている。
(註:“たおやかな”とは、マイルドでしなやかなる
ソフトな状態を云う)


味覚にうるさい立原はこの本の中で、
「煙をださずに魚が焼ける、という
電気器具があるらしく、
少々脳細胞の足らない奥方達が
競ってそれを用いているらしいが、
ああいう便利なものが出ると、
日本人の味覚はついにはアメリカ人なみに
 落ちてしまうだろう」
と嘆いております。(P-186) 


穴子はやはり真穴子が旨い、東京の一流の寿司屋で
黒穴子が出されたのには、驚いたとか・・・。
鯵は普通は室鯵、真鯵だが、かいわりと
呼ばれているやつを刺身で食うのが最高だ、
と言ってます。
これぞ人として生まれ、生きている実感だと
思っているそうです。


酒豪を誇る彼は、恐らく今の生活態度を変えてまで
生き長らえたくないと思っていたようです。
肝臓、すい臓をヒーヒー云わせながら五十代の半ばで、
あの世行きとなってしまいました。
(P-177)


立原は私とさほど年がかわりません。
にも拘わらず、考え方は明治生まれみたいな、
妙に頑固で意地っぱりな処があります。
どうも、ブリッ子的な感じが私にはするのですが・・。


人間どうも名声が上がり、先生などと呼ばれて
周囲から持ち上げられてくると、
傲慢になってくるものです。
この随筆集を読むうち、好きだった彼のことが、
だんだん嫌いになってきてしまったのは残念です。