☆自分の卑しい身分を隠さず、遂に公表する・・・。丑松はどんなに辛く悩んだ事だろう・・・。
題 名: 「破 戒」
整理番号:B-62
ジャンル:日本文学
読んだ時:平成30年 79才
著 者:島崎藤村
出 版 社:岩波文庫
内容・感想:
小諸なる古城のほとり 雲白く遊子かなしむ・・・
藤村の有名な詩で知られる千曲川。
この小説は、そんな貧しいながら牧歌的な山村を背景に
物語が進行して行きます。
人間は生まれながらにして、総て平等であることは
現代の日本では当たり前、丁度空気のようなものですが、
驚きますネェ、明治の終わり頃には未だ「穢多」(エタ)を
差別扱いしていたのですね。
穢多とは、古く江戸時代から存在する身分階級の
最下位の者たちで、非人とも云われます。
家畜の屠殺、皮の鞣し加工などを職としてました。
我々、多くの人は皆、コンプレックス、劣等感を
持っているものです。
精神的にも、肉体的にも。
例えば、鼻が低いのを気にしてる・・とか。
皆より判断力が遅くて、会話の輪で一緒に笑えない・・とか。
しかし、「穢多」であると云う劣等感を持つ事は、
最高に大変な事で、生まれながらの宿命ながら、
昔はさぞかし辛い思いをしたのでしょう。
この「破戒」という題名は、自分が穢多の生まれだと
言う事を隠さずに、堂々と世間に発表すると言う事で
弾けるのだと思いますが、どうもその趣旨が些か
違った筋書きのように思います。
主人公の丑松は発表しておきながら、何かこそこそと
アメリカに逃避するようになっており、
アパルトヘイトの問題を強く否定する意味を
持っていません。
せめて、密かに恋するお志穂と結ばれるなんて云う
筋書きにするのは如何でしょうか。
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