立夫文庫のブログ

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☆獅子はわが子を千尋の谷に突き落として自立を促す。何時までもの溺愛は逆に不幸にさせる元

             題 名:パラサイト・シングルの時代
            整理番号:F-09            
            ジャンル:学術
        読んだ時:平成15年 65才 
            著 者:山田昌弘
            出版社:ちくま書房


 内容・感想:
家族などと夕飯を食べるべく、築地のすし屋に行って
待っていた時、ぶらぶらと傍の本屋にふと立ち寄って、
手にしたのがこの本だった。
皆さん、この本の題名にもある、「パラサイト・シングル」
とはいったいどういう意味かお分かりだろうか。
直訳すると、寄生する独身者となる。


ここで取り上げているのは、三十歳過ぎても親元にいて、
なかなか結婚もせず、衣食住を親にべったり寄りかかりながら、
自分の収入は自分の好きなことに消費しながら、
けっこうよい生活を楽しんでいる娘、そして息子、
を指して、パラサイト・シングルと呼んでいる。
かっては、独身貴族と呼んでたもんだ。


ぼくは始め、この本を馬鹿にして、斜め読みしていた。
しかし読むにつれ、著者の、現在の日本社会に対する、
鋭い洞察力に共鳴を覚え、引き込まれていく自分を発見した。
今日もテレビの時事問題番組は、進行する少子高齢化社会、
それによって起こる厚生年金破綻問題、
いっこうに抜け出さない長期不況・・・etc、
アッピールし続けている。


これらの現在の、悩める日本社会の抱える問題の根底に、
パラサイト・シングルが深く原因の一つを、
綾なしているとは・・・目からポロリと鱗が落ちた
感じである。
著者の調査によると、こうしたパラサイトの数は、
わが国に1000万人もいるという。
まあ、その総てが、日本経済社会の足を引張っているとは
言わないが、就職難で已む無くフリーターとなり、
結婚も出来ずいつの間にか三十路を越してしまう若者が
いっぱいいるのも事実である。


その責任の一端は、親にある。
今、日本の中で、国は800兆円からの借金で
首が回らなくなっており、各民間企業も倒産、
赤字が深刻な中で、トータルで500兆円とも
900兆円ともいう貯蓄を持っているのが個人、
それも高齢者である。

誰でも、大方の親は、自分の子供は可愛いい。
だから、三十過ぎてもパラサイトしている娘、息子を
のほほんと居候させている。
だいたい、娘、息子が成人して就職して一本立ちした後まで、
やれ結婚費用だ、やれ孫の面倒だと、いつまでも経済面で
援助するのは日本ぐらいだそうである。


そうなると、当然のことながら娘、息子どものほうも、
結婚しようと思っても、結婚前の生活と
結婚後に予測される生活を比較してしまう。
結婚前に比べて、結婚後の生活がより満足がいくと
予測されれば、それに踏み切るだろうし、
逆だったらいつまでもパラサイト・シングルで
だらだらと時が過ぎ去っていくだろう。

でも、君達はもっと目をはっきり覚まさねばならない。
自分の子供を持ちたいと思わない人は別として、
遅くに結婚して出来た子供が成人した時、
自分はいくつになっているだろう・・・と。
35歳で結婚して、順調に子供を授かったとして、
その子が二十歳になる時、親は57歳ぐらいだ。
まあ、この辺が限度いっぱいで、それ以上遅いと、
親が経済的に面倒見切れない状況も想像される。


敢えて言うなら、この子が35歳になった時、
親は72歳だから、パラサイトすることが難しかろうから、
社会的に観れば悪循環が断ち切れるから、よい傾向と思うが・・・。

くだくだ言うより、結論を急ごう。
いかにしてパラサイト・シングルを親から早く独立させるか。
若年失業率が高くて、仕事に対する意欲を持てない
この日本社会の中で、いかにして彼等に「進取の気鋭」
を持たせ、いかにして「依存意識」から抜け出させるか、
その解決の糸口や如何?
作者の鋭い洞察力で、いくつかの、その解決策が模索されている。
その辺を、とくとご吟味下され………・。