立夫文庫のブログ

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☆物欲を満たしてる者よ、心も満たせ!・・・この書を読んで。

           
題 名:清貧の生きかた
            整理番号:G-04              
            ジャンル:その他
      読んだ時:平成14年 64才   
            著 者:中野孝次 編
            出版社:筑摩書房


 内容・感想:
今の世の中、ちょっと間違ってんじゃないの?
恐竜社会が滅びたのは、地球の天変地異が原因と思うけど、
現在進行中の人間社会崩壊過程は、全然違うと思います。
人間の物欲、金欲等に基づく経済至上主義は、
この一、二世紀それが当然の事として推し進められて来ました。


蒸気機関車のジェームスワット、電球や蓄音機のエジソン等々、
彼らは人間文化の発達に貢献した最高の賞賛を与えるに等しい者として、
誰も疑う余地も持ちませんでした。
近くは、原子力であり、コンピューターであります。


しかし、つい最近になってようやく、これでいいのか?
と言う疑問を真剣に持つ人間が増えて来てます。
そして自分なりに、生き方、考え方を方向づけて暮らす人間が
殖えて来てます。


そんな人たちの主張、随筆、考え方を集めたのが、この本です。
「自由で、豊かな、内面生活をするために、
あえて選んだシンプルライフ。」


貧乏礼讃、貧乏への勧め、或いは貧乏人の負け惜しみ、
などではありません。
地球の自然を破壊する事に対して、
自然保護論者が猛反対してます。


地球温暖化を防ぐための、二酸化炭素排出規制作り、
森林資源の不当な伐採規制・・・などなど、
最近トミに叫ばれておりますが、
ここに興味深いご意見が載ってますので、ご紹介しましょう。


88頁、今西氏の話。彼は京大卒の人類学者で、
文化勲章も受けてます。
山登りが好きで、年間60座も登ったりしてます。
要は、自然保護論者は環境がちょっとでも変われば、
直ちに生物に悪影響が及ぶかのように、
非常に神経質に云ってますが、
一方で、開発論者は開発により生物は絶滅しても、
人間だけは無限に環境の変化に適応し得るように考えており、
これら両者とも、群盲象を模すの感有りだと云うのです。
両者をともに生かすプリンシプルが発見されるには、
現況下では未熟段階と言うのです。


また曰く、(192頁あたり)
・ ・・人間と云う動物は、本質的に物欲金欲を
追求し続けるものとして、神が創造し賜うたのでしょうか。


そして、欲しい欲しいと思っても
なかなか手に入れられないので貧しさを感じます。
これを「魔的貧」と言います。


しかし、人間は精神の修行を積むことによって、
そんなことではいかんと思って、一生懸命努力して、
目の前に黄金を積まれても平然と素通りできるようになれば、
立派なものである。
これを黄金的貧と言います。


いやいや、それだけではいかん、自分は富も名誉もいらないが、
他人のためにいろいろと心配してあげる人、
これを喜びの貧者と言います。


まだ、この後に第四、第五段階がありますが、
イデオロギーに走りすぎる嫌いがあるので、止めておきます。
蓋し、我々はせめて第二段階を志して、
精神面の努力をしたいものです。


最後に、少々枝道になりますが、
168頁から174頁あたりにかけて、
安岡章太郎の散歩道になかなか良さそうなコースが有ります。


「・・・谷沢川というのがあり、それについて暫く上ると、
等々力不動尊の裏山に出る。
すると、そのドブ川のようだった小川が突如、
深山の渓流のおもむきを呈しはじめるのである。・・・」


安岡章太郎も、戦後病んだ体を回復させながら、
胃にやさしい豆腐を買いがてら散歩道を徘徊し、
いろいろな想いに心を巡らしていたわけです。
失われ行く自然にたいし、
悲しさが感じられる文章ではあります。


“ほととぎす 自由自在に聞く里は
酒屋へ三里 豆腐屋へ二里”