立夫文庫のブログ

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☆隅田川は今日もゆっくりと流れている。清も濁も呑みこんで・・・

題 名:ふるさと隅田川
             整理番号:G-03                
            ジャンル:その他
      読んだ時:平成14年 63才   
            著 者:幸田文  金井景子編  
            出版社:筑摩書房


 内容・感想:
幸田文(あや)さんは、文壇に名を馳せる幸田露伴の娘です。
でも、やはり明治生まれなので文体は古くて読みにくいです。
雑誌社などの要望に応えて、随筆を、現地に探訪したりして
書いたものと思われる文もいくつかありますが、
なかなか綺麗な文体で、言い回し方などには
とても工夫が凝らされ、感心させられます。


彼女は隅田川沿いに三ヶ所移り住んでおります。
最初は向島の寺島村、今の東向島の辺りか、
次はずっと下流の新川の辺り。
これは酒問屋にお嫁に入ったためです。
その次は両国橋の近く、柳橋の辺りです。


最初、きれいだった川の水が、悪臭を放つ死の川になり、
彼女はとても嘆いています。
平成二年に86歳で亡くなっているので、
晩年には隅田の水も鯉が棲めるまでになって、
ホッとしてたことでしょう。


時代の差はありますが、隅田川の向こう岸には、
芭蕉が住んでいました。
現在、記念館が建っていますが、常盤一丁目辺りで、


“草の戸も 住み替える代ぞ ひなの家”・・・
などと詠んでいたわけです。


文中130ページあたり、山の手の奥さん族と、
下町の女房族の対比は面白いと思います。