立夫文庫のブログ

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☆前科のある人の、再犯防止の問題をもっと真剣に、そして温かい目で考えねばならないと思います。

           題 名:飢餓海峡 上下巻
            整理番号:B-36              
            ジャンル:日本文学
      読んだ時:平成17年 66才   
            著 者:水上 勉
            出版社:新潮文庫


 内容・感想:
この度(平成17年)、著者水上勉氏は亡くなりました。
追悼の意味で、この一冊を謹んで読ませて頂きました。
いや、素晴らしい力作の一冊でした。
作者もこれを執筆当時、43歳ぐらいで、ちょうど油の乗ってきた
時期だったと思いました。 


北海道・東京・舞鶴・・・と日本列島の中を
ピョンピョン飛び回っての、悪漢探偵ゴッコは、
とても面白くて、地下鉄から降りたくなくなる衝動に
駆られながら読んだものでした。


丁度、昨年後半から勇治君が結婚して、
札幌転勤しているので、津軽海峡の辺りとか、
積丹半島の奇岩怪石など、余計ビビッドに
感じられました。


主役の、犬飼太吉こと樽見京一郎のことを、
読みながら頭の中で、アントニオ猪木の顔を彷彿
とさせていました。


登場人物のモデルは一応、存在するとの事ですが、
戦後間もないビッグ事件の、洞爺丸の遭難、
その陰に隠れてあまり報道されなかった岩内の大火などは、
ほんとに起こった事件でした。


凶悪犯の犬飼太吉と二人の刑余者の犯行も、
いかにも本当みたいに書くもんだから、
途中まで本気にさせられてしまっていました。


それにしても、上巻86ページにあるように、
当時は、刑務所から追い出された者が、ろくな銭も持たず、
そうかといって前科者がおちおち郷里にも帰りづらいだろうし、
食うものにも困って、また犯罪を起こすのが当たり前
だと思うのに、追尾もせず、ただ野放し状態にしていた事実は、
誠に樽見京一郎でなくても、何とか対策をしてもらいたくなる
と言うものです。