立夫文庫のブログ

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☆狐狸庵先生シリーズの名調子が続きます。今回は「クレブス」についてです。

           題名:灯のうるむ頃  
    整理番号:B-04
            ジャンル:日本文学                
   著者:遠藤 周作
            出版社:角川文庫


内容・感想:
どうも小生は遠藤周作の書物に最近ハマっているようです。
それ即ち、彼の書物が私にとって、思考的に好きだから
なのでありましょうし、感銘的なんだと思います。
 年も15歳の違いはありますが、同じ戦中戦後を
歩んで来たものですから共鳴する面も多いのも当然と
言えましょう。


カルチノーム、クレブス、カンサー・・・
といったらどういう意味だか解りますか?
ヒント・・・この本は風采のあがらない、
一人の老いぼれ町医者が主人公ですが、
彼の専門の血液の赤血球に付いて、地道な研究を
重ねるうち、癌に対する画期的な治療薬を開発します。
・ ・・そう、上の三つの単語はいずれも「癌」を
表わす医学用語なのです。


クレブスの特効薬は現代人にとって渇望中の物ですが、
この病に侵された事による悲喜こもごもの人間模様が
社会風刺を交えながら、書かれております。


人生は、神様が人間を造るときに、いつになったら
死が訪れるのか、本人には分からないようにしてくれて
いるのです。


神が人間を造るときから、一人一人その寿命は
決められているのに、その時が分かっていては、
あまりにも可愛そうなので、たとえ一年後に交通事故で
死ぬ運命の人でも、現時点ではまだ希望を持って、
はつらつと生きているようにしてくれている訳です。


しかし、カルチノームの宣告は、この神の慈悲を
打ち破るものです。
だからこそ、この宣告による波及は、
様ざまなドラマを呼んで、小説の種にもなるのです。
カンサーに限らず、一端自分自身が死を宣せられたら
一体どんなに気が動転することでありましょう。
健康な私には、単に想像の域でしか理解できませんが・・・。