立夫文庫のブログ

「立夫文庫」にようこそ! どうぞごゆっくりご覧下さい。
当ブログを、楽しく、為になる読書のナビゲーターとして、ご活用下さい。

☆狐狸庵先生の傑作は続きます・・・

            題名: 影法師
    整理番号:B-09
            ジャンル:日本文学         
            著者:遠藤周作
            出版社:新潮社


内容・感想:
私の好きな作家 遠藤周作の短編集と言うか、
随筆集と言うか・・・
後の三つを除いて、彼の日記帖みたいなものですね。


母のキリスト教信仰に、環境的に自らも入っていった
彼の子供時代。
一途に立派だと尊敬していた神父の、思わぬ一面を
見てしまって幻滅を感じた日々。


「しかし私は、神父だって人間なのだから
そんな事ぐらいでびっくりするのは甘いと思うよ~。
寧ろ神父の人間性豊かな面に触れて、
親しみを感じなくてはいけないと思いますがね~」


戦後の若手作家では真っ先にフランス留学が
出来た彼(狐狸庵先生)。
そしてハードな生活から、患ってしまった結核病。
当時の日本では大変ヤバイ病気であったにも拘らず、
死の淵から這い上がって、不死鳥の如く文壇を
駈け上った彼。


そういえば、つい最近(平成2年12月)の事ですが、
彼の家に泥棒が入り、700万円盗られた由。
今の彼にとって700万はたいした事ではないですが、
インタビューに応じて曰く、
「あれは私のへそくりでしたので、思わぬところで
女房にバレてしまいました」と云うことでした。


今は、そんなゆとり有ることを云ってますが、
この本を書いた頃の彼にとって、この世に生きて
いられることの意味は、真に迫った描写が感じられます。


私はこう思います!  
人間って何なんだ?  
君は何んで生きているのだ。
単なるウンチ製造機では困るよ・・・と。


私はせっかく神に生きることを許されているのですから、
残されたわずかの人生を次に記す主義をもって過ごしたい
と思います。
 一つ、 日々を楽しく生きたい。
    二つ、  五体満足のうちに、より多くの事を体験したい。
 三つ、 死んだ後、何がしかの自分の足跡を残したい。


この本の後の三編も、人間の生きザマという範疇では
共通性があります。
「ユリアと呼ぶ女」では、
「ユリアは壁にもたれ、祈るように手を組んだまま死んでいた。
漁師は彼女の顔が、ひどく浄らかで美しいと思った・・・」
の文章で終わるこの物語を読みながら、
何故か自然に涙を禁じ得ませんでした。