立夫文庫のブログ

「立夫文庫」にようこそ! どうぞごゆっくりご覧下さい。
当ブログを、楽しく、為になる読書のナビゲーターとして、ご活用下さい。

☆えー 講談をば一席、・・・江戸の昔から世の中には、賢いおなごがいろいろとおりまして・・・と言う訳です。

            題 名:婦道小説集
    整理番号:B-27           
            ジャンル:日本文学
     読んだ時:平成14年 64才
            著 者:山本周五郎
             出版社:実業之日本社


 内容・感想:
昭和52年出版のこの本は、友人の梅岡君から最近貰ったもの。
女が必ず筋書きの重要な役割を為してます。
短編ばかり、15のお話から成ってますが、
登場人物の名前をいちいち覚えなくてはならないのがしんどい。


私の若い時分には、まだ結構流行っておりました「講談」、
・・・演台に扇子みたような物を両手でリズミカルに
叩きつけながら伝来の物語を語る講釈師。
まるで見て来たようなお話たちです。


昨今はあまり、テレビなどでもお目に掛かれなくなりましたが、
この本は正にそんな物語の連続です。
しかし、内容は、かなり史実に基づいていることが窺がえます。
おそらく、江戸時代の各藩の残された記録などを
丹念に調べながら、それをふくらまして作品に仕上げて
いるのでしょう。


例えば、第七話の「備前名弓伝」・・・
主役の青地三之丞 (あおちさんのじょう)は
一見他人より何の秀でた才能もない、
ごく普通の若武者でありましたが、
実は弓道精神の極意をマスターしている
天性の人物でありました。


能ある鷹は爪を隠す・・・能ない豚はヘソを隠す、
と言いますが、滝川幸之進はその後者でありました。


幸之進にそそのかされて決闘をした折、
三之丞は相手に矢を払われて、その勝負に負けとなりましたが、
実はその時三之丞が用いた弓は練習用の弱い弓でありました。
その後、慢心者の幸之進が主君光政公に叛いて逃亡した際、
その成敗に向かう三之丞に君主光正は
三之丞が負けちゃうんじゃないかと恐れました。


しかしその時、光政にアドバイスを送ったのが、
三之丞の従妹の“なつ”でありました。
曰く、「三之丞は過日決闘の折には、あえて弱い弓を使っており、
今日は強弓を持っていっておりますので、
無事幸之進を討ち果たすでしょう」と。


三之丞は主君の覚えも目出度く、やがてなつを娶って
無事長久の人生を送ったのでありました。


ブスッとしているだけでは、主君もあの馬鹿何やってんだと思い、
誤解を招くおそれがありますが、女の介添えで目出度く収まって、
よかったね・・・と言うわけ。


第八話「牡丹花譜」の舞台は、
仙台伊達領豪家黒上家でのお話ですが、
千余株の牡丹花は今もなお「岩沼の牡丹屋敷」と呼ばれて、
年毎に繚乱と咲き誇っている・・・
と言うから一度是非行って見たいもんですね。
詳しい場所は、阿武隈川の北岸にある岩沼の町はずれ、
九里の森の中であるそうです。


ストーリーは黒上家の牡丹姫と言われた美しい奈々と、
伊達騒動(だてそうどう)有名な陸奥の守(むつのかみ)綱村公
とのお話です。
甲斐一派に狙われた綱村公を、恋する姫が命を張って
かばったという・・・
しかし、その心は綱村公には果たして
伝わったのでありましょうか・・・
という悲恋の物語であります。