☆平成16年芥川賞作品。私はホの字なのにチットもこっちを向いてくれない男の子。そんなヤツの背中を蹴ってやりたい!
題 名:蹴りたい背中
整理番号:B-33
ジャンル:日本文学
読んだ時:平成16年 65才
著 者:綿矢りさ
出版社:河出書房新社
内容・感想:
“蛇にピアス”と一緒に、今年芥川賞に輝いた本です。
ヒロインの彼女は、ごく平凡な高校生。
その、閉鎖的で、極度に偏見的なマナコが見た、
自分の廻りの高校生活。
僕は、読んでいくうち、僕の高校時代を思い出して
しまいました。
当時の都立上野高校は、学区の中の最高の受験校であり、
ドンヨリと沈んだ、灰色の空気に満ち満ちていました。
今、考えてみても、楽しい思い出は全然ないです。
この彼女の場合、敢えてみんなから遠ざかり、
寡黙をきめ込んでいるキライがありますが、
その閉ざされた貝の蓋をほんの少し開けて、
鋭い洞察力で周りを批判しております。
友達の悪口みたいなことも、こうもズケズケと
言っていられるあたり、たいしたもんだと思います。
自分の経験に基づく小説の場合、実在の該当者が
いる訳でしょうから、その人への配慮から
なかなか思うように書けないものと思いますが、
彼女の場合、その辺がたいしたもんだと思います。
彼氏=にな川に、彼女は“ほの字”なのに、
彼は女優のオリチャンの盲目的ファンで、
他のことには少しも振り向いてくれません。
そんなジレッタイ気持ちに思わず
「おい!たまにはこっち向けよ!」
みたいに、背中を蹴りたくなる。
解かる、解かる、その気持ち。
72ページ中ほど、中学から一緒に来た、
唯一親しい友達の絹代とのやりとり。
僕の当時に、オーバーラップすることがあって、
思わずボンヤリとしてしまったりです。
それは、中学当時親しかった高柳君とのことです。
残念ながら彼は別の高校に進み、僕は心に空白を
感じていました。
そんな時、彼から誘いの電話があり、
白樺湖にスケートに行きました。
でも以前とは状況がちがっていたのです。
彼は、新しい仲間とマージャンなどをおぼえて、
愉快げに振る舞い高校生活をエンジョイしてるのが
感じられました。
それに引き替え、僕は未だに立ち直れないでいて、
ギャップと焦りを感じたものでした。
しかし、その高柳君も、今はあの世に行ってしまってます。
彼が亡くなる少し前に、久しぶりに、
ほんとにおそらく白樺湖以来ぐらいに、
一緒にゴルフをすることが出来てよかったと思ってます。
まあ、この彼女にしても、あとになって振り返ってみれば、
青春の懐かしい思い出の一ページになることでしょう・・・。
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