立夫文庫のブログ

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☆ああ辛い・・もうおんななんぞに生まれはしませんよ・・・

            題  名:不如帰
            整理番号:B-65        
            ジャンル:日本文学
      読んだ時:平成30年 80才    
            著  者:徳富蘆花
            出 版 社:岩波文庫


 内容・感想:
世田谷区の北部、環状八号線沿いに恒春園と云う
大きな公園があります。
正にここは徳富蘆花が棲んでいた処です。


武男と浪子の悲しい物語。
蘆花は、ある実在の人物をモデルにして書いていました。
それは、日清戦争で有名を馳せた、大山元帥家でした。
元帥の後妻に入った捨松と云う名の女性が、浪子のママ母です。


当時不如帰がベストセラーになると、捨松に世間の冷淡な目が
向けられて大変だったようです。
しかし大山捨松女史と云う人は、小説に出ているような
悪ではなく、良妻賢母であったばかりでなく、社会的にも
素晴らしい業績を残した人でした。


蘆花は捨松女史に長い間謝罪もしませんで、
筋書き上、哀れな武男浪子を盛り立てるため、已む無しと
してたようです。


ところで、蘆花には徳富蘇峰と言う名の、立派な兄が
おりました。
蘇峰は社会的に大変活動的な人で、数々の業績を残しています。
蘆花は純粋な文学者ですが、対照的でした。


まあ、この小説、文体が硬くて、少々読み難いですが、
漢詩調なのを念頭において読むといいです。
最後に、「不如帰」=「ほととぎす」と言う鳥は、
血を吐きながらも鳴く鳥だそうです。