立夫文庫のブログ

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☆ジワーッと背筋が凍って来て、ほんのりお色気を感じる鏡花先生の語り口。維新150年を祈念して読んで見給え

題  名:高野の聖・眉かくしの霊
            整理番号:B-67        
            ジャンル:日本文学
      読んだ時:平成30年 80才   
            著  者:泉 鏡花
            出 版 社:岩波文庫


 内容・感想:
維新150年読書の一冊。


鏡花の代表作「高野の聖」・・・
高野山の高僧が以前、飛騨の山越えをした時の、
怖ろしくもあり、とても印象深いお話と言う設定。


麓の茶屋で偶々一緒になった富山の薬売り。
旅なれて、何かいやな感じの若い衆でしたが、
岐路に差し掛かり、その若い衆は右にむかって進みました。


後から参りました聖は、その岐路で迷っておりますと、
通り掛った地元の百姓が右に行くのは絶対におよしなせぇ、
と云います。
そこで黙って左道を行けばいいのに、さい前の薬売りに
忠告してあげようと、右に道をとります。


百姓の言うとおり、聖は大変な難儀をします。
蛭がバラバラと落ちてへばり付き、
払っても払っても食らい付かれて血を吸われます。
しかし、ホウホウの体で、何とかそこを突破すると
彼方からヒヒーンと馬の鳴き声がします。
しめた! と云うことで、ようやく一軒の山家に着きました。


やれやれ、ホッとして、色白の艶かしい家人の言われるまま
ご厄介になることとなりました。
この家の主人がさいぜん鳴声を聞いた馬を売りに出かけた留守の事、
御坊も人の子、その家人の色仕掛けに内心、揺ら揺らと
することはありました。
しかし流石は高野の聖、結果何とかセーフでした。


後で聞けば、あの馬は最前来て、おんな家人に手を出した、
薬売りの若い衆が、霊力で馬にされた事が判りました。
なんまんだぶ なんまんだぶ・・・・


「眉かくしの霊」・・・
旅をしている境君は良い宿屋に恵まれず難儀をして
おりましたが、漸く居心地の良い、宿に巡り着きました。
木曽の山々に日が落ちて、奈良井川の瀬音が響く
佇まいです。


鶫焼きを肴に熱燗に満足してから、湯殿に赴きました。
入ろうとすると、人の気配。
それもどうやらご婦人の様子。
「入りますよ」と言うと、「いけません」と言う。


実は、仲居の案内で湯殿に出向くのは、これで二度目
なのてす。
境君は頭にきて、部屋に帰ります。
後で料理番の男に、いろいろ聞きますと、曰く因縁が
ジワーッと判って参ります。


鏡花の怪談は、後でジーンと怖さが滲み出て来ます。
なかなかと、こった演出に、夜トイレに行きにくくなります。