立夫文庫のブログ

「立夫文庫」にようこそ! どうぞごゆっくりご覧下さい。
当ブログを、楽しく、為になる読書のナビゲーターとして、ご活用下さい。

☆「宗教の自由」を私たちは、空気みたいに感じているけど、もっと大事にしたいと思う。

 題名:沈 黙
     整理番号:B-13
            ジャンル:日本文学        
            著者:遠藤周作
            出版社:新潮社


内容・感想:
この小説は考えようによっては、ものすごいことをテーマにしている
小説であると思う。
この世に唯一のキリスト教は、聖書にもあるように信者が危機に陥ると
奇跡が起こって救ってくれるけど、今回は神は沈黙を守っている・・・
と言うことだ。


キチヂローに密告され、とらわれの身となったポルトガルの司祭
セバスチャン・ロドリゴは散々嘆き、悩み苦しんだあげく、
ついにキリストの顔に足をかけてしまう。
殉教の道を選ぶより、棄教してでも、この世に未練を残したのだ。


無知に近く赤貧のどん底に喘ぐ日本の農民の信者達が、
この世を捨ててハライソに望みを託して死んでいってるのに、
・・・やはりインテリは所詮、柔弱なる精神力しか
持ち合わせていないのか。


それにしても井上筑後守の棄教作戦はハンパじゃない。
単に拷問を激しくして強引に棄教を叫ばせるのではない。
説得を繰り返し、並行して穴吊りの刑の恐怖をじわじわと
感じさせていく。


穴吊りとは、深く掘った穴の上に足を縛られた罪人が逆さに
吊りさげられる。
しかし、ただ単に吊られるだけではない。
人間は血が頭にのぼって、じきに死んでしまうそうだ。
そこで罪人の耳の後ろあたりに穴をあけておくと、
血が少しずつ抜けて何日か生きて苦しんでいると云う事だ。


夜など幽霊のように聞こえて来る・・・
丁度、鼾をかいてのんびりと寝ているような声で、
グゥーッ、グゥーッと聞こえるそうな。


ロドリゴのもとに、最後に説得に差し向けられたのは、
彼の師と仰ぐ、母国ポルトガルでも有数の司祭である
フェレイラであった。
パードレ・フェレイラは、やはり井上筑後守によって
落とされた転びのペテロであった。
その説得もあってロドリゴはついに転んだ。


踏絵のキリストを見て曰く、「キリストは私に語りかけている
・・・・私はお前達に踏まれるために、この世に生まれたのだ。
踏むがいい・・・と」。


その後しばらくしてロドリゴは、江戸キリシタン屋敷送りとなり、
岡田三右衛門なる日本名をもらい、六十四才で、
其の、目的をもぎ取られた人生を病死した。
所持金二十八両三分之有りとかや・・・