立夫文庫のブログ

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☆この火山国日本が、何日海に沈んでもおかしくない・・・と思う。

     題  名:日本沈没 上下巻
            整理番号:B-41             
            ジャンル:日本文学
        読んだ時:平成19年 69才   
            著  者:小松左京
            出 版 社:小学館文庫


 内容・感想:
今年の八月に、ここ千駄木に事務所を移してから、
どうも今までとペースが違って、日々のリズムがぎこちない。
地下鉄等で移動の時などに読んでいた本が、
そのチャンスが極端に減ったので、全然ハカがいかない。


この「日本沈没」も読み始めて半年近くになるが、
まだ読破できていない。
しかし何と精力的に書かれた本だろう。
一頁、一頁、ぎっしりと詰まっている活字。
作者が訴えたいことが、これでもか、これでもか、
と言わんがばかりにしたためられている。


それを、主に田所博士の口を通じて、言わしめている。
勿論、この本のヒーローは深海潜水艇のベテランパイロット
小野寺青年だが、前編で活躍する田所博士は、
著者小松左京が被っている蓑だ。
著者は本当に、日本が沈没する可能性があると思っているのだ
・・・・と僕は思う。


田所博士に言わしめて曰く、「・・・わしには地球がある。
大洋と大気の中からもろもろの生物を何十億年に亘って産み出し、
育んだそいつらに、地表をめちゃめちゃにされながら、
なおそれ自体の運命、それ自体の歴史を刻んでいく、
この大きな・・・しかし宇宙の中の砂粒より小さな・・・星がある」
・・・「人間の直観力とイマジネーションは、
厳密な意味では科学の中には受け入れられない。・・・
メンデルの遺伝法則、アインシュタインの相対性理論等々・・・」
仮説が実証されなければ、科学として受け入れられないのが現実だ。
(P.175辺り)


「しかし」・・・と田所博士は熱弁をふるう。
私が今考えていることは、「ひょっとしたら、
地球の長い地殻変動の歴史の中で、これまで一度も
起こったことの無いことかも知れないが、
それが起こったという証拠は、われわれの文明が
これまでにかき集めることのできたデータからは、
まだ出てこないだけかもしれない。
だが・・・過去に一度も起こったことのないことでも、
未来には起こりえないとはいえない!」


・ ・・・このようにして、彼は日本沈没論を
真剣に主張しているのである。(P.326辺り)
そして、恋人であり、母である日本が
断末魔の苦しみで悶える中で運命を共にせんとするのであった。
本書は1973年に書き下ろされ、当時大センセーションを
引き起こし、400万部のベストセラーを記録した熱作である。
それから35年経った今でもビビッドな内容が
バンバン伝わってくるし、科学、社会、政治等の体制は
旧態依然の感がある。