立夫文庫のブログ

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☆満州からの脱出は、チャンコロやロスケに追われながら大変であった

       題  名:流れる星は生きている
            整理番号:G-08          
            ジャンル:その他
      読んだ時:平成28年 78才

            著  者:藤原てい
            出 版 社:中央公論新社


 内容・感想:
著者のていさんは、昨日(平成28年11月19日)亡くなりました。
彼女は作家新田次郎の妻です。
と云うより、次郎氏は、ていさんを見て一念発起して
作家になったのです。


この書は、ていさんの満州からの、
必死の脱出ドキュメントです。
しかも、生れて間もない乳飲み子をはじめ、
二人の幼い子供を抱えてですから、大変なる事、
想像に絶する感があります。


当時、同じような体験をした人は大勢いたと思いますが、
ていさんのように夫が官庁勤務とか、関東軍直属だった人は、
いち早く逃げ切れた人が多かったようです。
故に、本当に悲惨で、日本に帰り着けなかった多くの
民間の日本人がいたのは、事実だったようです。


題名の「流れる星は生きている」と云うのは、
必死で逃亡中のていさん達に、
どこからとも無くやって来たある人が、
唄った歌で、とても悲しくて、
当時のていさん達の心に沁みた歌の題名なのです。
「ビルマの盾琴」のお話を思い出します。


やっとの事で、38度線を越え、アメリカ軍に
温かく迎えられた時、医療施設で足の裏に無数にめり込んだ石を、
医者がピンセットで取り出すシーンは、
想像するだけでゾッとします。
その、一言をとっても、よくまあ耐えて来たものだと
思わされます。
ていさん、謹んでご冥福を祈ります。