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☆占領軍アメリカの紳士的な処置に、先ず感謝

題 名:マッカーサーの二つの帽子
    整理番号:C-12             
            ジャンル:歴史
      読んだ時:平成15年 65才   
            著 者:ドウス昌代
            出版社:講談社文庫


 内容・感想:
いゃー、まったく、この本は実に素晴らしい!
約六十年前、太平洋戦争に負けた日本、
いよいよ占領軍が上陸してくると言う時、敗戦側の我々は、
いったいどういう心境になっていたんでしょう。
恐ろしい敵が、略奪を欲しいままにし、婦女は暴行され、
反抗する男は容赦なく撃ち殺される・・・。


きっと不安でいっぱいだったことと思います。
僕は終戦時、七歳。
恐らく、このドキュメンタリーの著者、ドウス女史も
同じぐらいの年だったと思います。
だから当時、どうなっちまうのかなど、
判断できる年じゃなかった筈です。
しかし、ドウスは英語に強いから、占領が解けて、
アメリカに持ち帰られた当時の文献を
そのすぐれた英語力で発掘し、
このようにビビッドな本に仕上げられたのです。


もっとも、戦後しばらくは、トップシークレットとして、
重要な資料は公開されなかったことは言うまでもありません。
だから、当時の状況が、ずっと後になって明らかになるにつれ、
あー、そんなことだったのか・・・
と、びっくりさせられることがとても多いものです。


結果、アメリカはとても良心的で、今日につながる
明るい民主主義国家が造られました。
最近、やはりアメリカによって占領されたイラク国の
場合と比較して、日本の復興は、何か全然良かったんじゃ
ないかと思ったりしてます。


さて、本の内容ですが、先ず、題名の「二つの帽子」とは、
いったい何だと思いますか?


この本のテーマの、対アメリカ兵士の売春組織「RAA」は
必要悪として、終戦直後秘密裏に、
警視庁によって創られたものでした。
曰く、日本の純血、大和なでしこをヤンキーから護ろう!
・・・というのが目的だったようです。
当然の事ながら、結果として性病が、はびこりました。


マッカーサーは如何にして米兵を性病から安全確保するか・・・
と云うのが一つの帽子。
しかし、日本人に売春にまつわるモラルを
米国水準で押し付けるべきでない・・・と云うのが
もう一方の帽子でありました。


つまり日本の戦後復興は、日本人の力でやらねばならないからです。
マック元帥の下で、公衆衛生福祉を担当するサムス大佐が、
この件に関し大活躍します。
サムスは当時四十四歳、偉ぶることもなく、マックの幕僚の中でも
最年少ながら、マックの趣旨にそった考えを持ち、
日本人にも好感が持たれていたようです。


ドウス女史は執筆にあたり、渡米してサムスに会おうと探しましたが、
なかなか行きあえず、高齢なので、会えず仕舞になるのを恐れましたが、
ようやく七十七歳のサムスに会えて、いろいろ聴くことができ、
よかったということでした。


RAAの組織造りに、当時の大蔵省主税局長池田隼人は、
当時の金で「一億円出す」と言ったそうです。
終戦直後の一億円はすごい!

今に換算すると、一千億円以上になるでしょう。
そんな金で、片っ端から有名料亭やら、土地建物等など
買いあさったのです。


まあ、結局RAAは、戦後四年ぐらい経ってその使命も終わって
・・・というか、集団売春施設の禁止に伴い、
日本観光企業株式会社へと変貌するのですが、
その膨大な不動産資産を持つRAAの中身を、
株の取得という手法により、うまうまと手にしたのが、
当時池袋周辺で土地ブローカーみたいなことで小金を
太らしていた、「池袋王」の異名を取る、伊藤弘義と云う男で、
濡れ手に泡とはこの事でした・・・。 全くケシカラン!!!


最後に一つ・・・
Youth is not a time of life, It’s a state of mind.
から始まるサミエル・ウルマンの詩は、
終戦当時のGHQのマッカーサーの部屋に貼ってありました。
若さとは 年齢ではない 心の持ちようである・・・
何と素晴らしい詩でしょうか。 
そう思いませんか・・・。