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☆ 現代にもありそうな計画倒産劇。江戸の末期経済的に困窮した松平家はとんでもない計画を建てました・・・

題  名: 大 名 倒 産 上下巻
整理番号:B-78        
ジャンル:日本文学
読んだ時:令和 5 年 85 才     
著  者: 浅田次郎
出 版 社: 文春文庫


 内容・感想:
著者の浅田先生は今72歳。油の乗り切ったお年で、独特の浅田節を繰広げてます。
同じジャンルの時代小説作家でも、村上元三、吉川英治などのタッチとは違って
庶民的で、その分読み易いです。


今年(2023年6月リリース)前田哲監督により松竹系から映画化されました。
この本を進呈してくれた永井君と見に行きたいと思いましたが既に上映終了なので
12月頃発売予定のDVDで観たいです。
主役の松平和泉之守役をNHK朝ドラ「らんまん」で現在活躍中の神木隆之介君が
演じています。


この物語の主人公の松平和泉守の知行地は現在の福井県丹生山系辺りを想像しながら
読むといいと思います。
(実際には浅田先生は新潟北部に位置する村上藩を想定したそうですが)
三つ葉葵の松平家ですが、家康を祖としても多岐に亘り、主人公の和泉守は
「越前松平家」の系統として亜流になってます。
浅田先生もかなり歴史を解析して史実に近い内容も多いですが、まあ楽しい時代小説
なので、深く詮索するのはナンセンスと思って読むべきと存じます。


大きな流れとして、江戸の末期近くの諸大名達は、経済的に窮地に追い込まれて居た
と言う史実はあると思うし、計画倒産を考えるという発想も有り得るかなぁ~と
思いました。
藩の累積借金25万両、年間歳入が1万両・・・どう考えても解決策は考えられない。
何か、今の日本の財政状態を連想してしまいます。
累積債務1100兆円、年間税収60兆円。


ストーリー概略。
時は江戸時代末期の文久2年(1862年)12代松平和泉守には3人の男子のお子が
いましたが、何れも家督を譲るに適していない。
そこで、過って奉公に上がっていた村娘にチョッカイして出来てしまった子を認知して
13代藩主に据えることと致しました。
12代としては、裏で資財を貯めこんで計画倒産に持ち込み、13代を切腹させてお家の
断絶を目論みました。


しかしドッコイ、この13代松平和泉守は若冠21歳、実直にして優秀な青年で、
何とかお家を建て直すべく懸命の努力をしていきます。
苦労して義務の参勤交代を何とか実行して、お国元に初めて行ってみれば、
素晴らしいお城と実直な二人のお国家老、そして領民に田畑一千町歩を有する
豪農が居りました。
お国を流れる蘆川には遡上する鮭を捕獲する簗が、お国の管理の下、事業化
されております。
そして美しい景色。


十三代和泉守はこのような豊かなお国を潰してなるものかと、一生懸命努力
致します。
そして江戸表に帰った後、出入りの商人達に頭を下げ、半額を一年後に完済する
条件を呑ませ、安堵するのでした。
目出度し、目出度し・・・・