立夫文庫のブログ

「立夫文庫」にようこそ! どうぞごゆっくりご覧下さい。
当ブログを、楽しく、為になる読書のナビゲーターとして、ご活用下さい。

☆アイネイアスはトロイア国の王子。彼の波乱とロマンに満ちた物語として、書かれている。

           題名:新トロイア物語
   整理番号:C-07                 
            ジャンル:歴史
     読んだ時:平成 8年 57才   
            著者:阿刀田 高
            出版社:講談社


内容・感想:
大きな本をショルダーバッグに入れて、通勤途中にひっぱり出して
読むのは、ちょっと大変でした。
でも、とても面白かったので、どんどんはかがいって比較的短時間に
読みおえることが出来ました。
僕は大体、人類の歴史的なことに、とても興味がある人ですが、
ここ数年西洋のそれに感心がトレンドしてます。


考えてみれば、アメーバから始まった生物が、徐々に徐々に
進歩して人が出来、その石頭の原始人が、徐々に徐々に
知恵が付いてきて、いろいろ複雑な歴史を形造ってきて
いるのですから面白いと思います。


今、一才と九ケ月になって、僕の前をチョコチョコ走り回っている
孫の綜一朗を見ていますと、その知恵の付く速さに驚嘆します。 
 昨日までジェラシーから妹の綾香をムラムラとターゲットに
していましたが、今日はいい子いい子してます。
そうしないと親がうるさいから・・・という知恵です。


昔の人と違って、現代人のDNAには、知恵の付き方が
アクセレイトされる機能が備わってきたらしいです。
もちろん諸先輩の文献によって、未経験にも拘らず知識の
飛躍的蓄積を成し遂げたという面も、人類の加速度的発展の
最大の武器になっているとは思いますけど。


このDNAのルーツは、この物語の舞台となっている、
紀元前1200年頃に遡ると思います。
ギリシャのあちこちにポリスが出来、群雄が跋扈し始めた時期、
神々が盛んに活躍する時期であります。


我々はこの、美しくも殺伐とした物語を、BC900年頃を
生きたホメロスの叙事詩によって、知ることが出来ます。
ホメロスも300年も前の事を書くのですから大変だったと思います。
おそらく日本に於ける古事記が、語り部たちの口伝を基にして
初めて文字に出来たのと、同じ様なことだったろうと思います。
ヴェルギリウスに至っては、ホメロスよりも数百年も後の人ですから、
なおさらの事だったでしょう。


それでは、阿刀田高アレンジのトロイア記、じっくりご覧あれ。


かの有名なトロイア戦争を、アイネイアスに主役を絞って
ストーリーを構成しています。
アイネイアスは、トロイア王国の忠実なる参謀アンキセスの
一人息子です。
父親の薫陶よろしく、立派な青年に成長した銀は
(彼は美しいプラチナゴールドの髪を持っていたので、
 このニックネームで呼ばれてました)波乱万丈の運命をたどるのです。


ギリシャの大軍を長期に亘り悩ました挙げ句、ついにトロイア城を
開け渡してしまいますが、僅かな部下と共に、トロイア再建を志して
エーゲ海に漕ぎ出します。
先ずエーゲ海を北上してトラキアに行きますが、トロイアの財宝を
多くつぎ込んだ同盟國も、戦に負けた銀たちに対しては冷たいものでした。


己むなくまたエーゲ海を南下して、クレタ島のキドニアで神託を問います。
すると神は「西へ向かえ」と言います。
「理は西方にあり。海のほとり、大河の注ぐ所食卓、食する時・・・」などと、
訳のわかんない事を言います。
しかしとにかく神託の通り、西遊記じゃないですが、西を目指して航海を
開始します。
途中いろいろ情報収集してみますと、西方の果てにエスペリアあり。
その付近はフェニキア人が、はばをきかしているらしい。


銀の乳母カイエタも、エスペリアの出身と聞きます。
エスペリアとは、現在のイタリア半島の中西部を指し、
そこに行くには半島の南端のシシリア島を回って行かねばなりません。
途方もなく遠々たる航海になります。
でも銀の決意は固く、途上幾多の試練にもめげず、進んで行きます。
特にアフリカ側の新興國カルタゴに、嵐のため漂着した際の事は、
銀の決心をぐらつかせるほどのインパクトでありました。


現在のパレスチナ海岸あたりに、ティロスという町有りき。
貿易により莫大な富を築き上げたシュカイオスは、
やがて国王のピュグマリオンに暗殺され、富を奪われそうになります。
ところがどっこい、シュカイオスの妻ディドはしっかり者でした。
夫の死にめそめそしてばかりいないで、夫と共にシコシコ
蓄め込んだ財宝を船底に隠し、それとは別に錦の袋に砂を入れ、
海上に脱出したところでその砂袋をバンバン海に放り込みます。
それを見た国王はアッケラカンとして諦めてしまいます。


ディドは現在のチュニジアあたりにたどり着き、
フェニキア人の言葉で新しき町を意とする“カルタゴ”を建国します。
その建国して間もないころの事、隣国から攻められ女なるが故に
いろいろと困っている折でしたので、アイネイアス一行は
重宝がられた面もあります。


いずれにしても、一行はようやくのことカルタゴを脱出して、
エスペリアにたどり着きます。
実にアンタンドロスの港を出てから7年の歳月が経っていました。
そしてついに大願成就するという、サスペンスとロマンに溢れる物語です。