立夫文庫のブログ

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☆ ナポレオン時代をロシアの貴族の世界から描いた、トルストイの代表作。今回はその中間報告編です。

 題名:戦争と平和 1,2,3,4,5,6巻
    整理番号:D-25       
            ジャンル:外国文学
      読み出した時:令和元年8月 81才
            著者:レフ ニコラエヴィチ トルストイ
   訳者: 藤沼 貴
            出版社:岩波文庫
  
内容・感想:
広大なヤースナヤ・ポリャーナに生まれ、そこで生涯を過ごした
トルストイ。
彼は帝政ロシア時代の伯爵家の四男坊として生まれ、
後にこの地を相続し、若きソフィアと結婚し、一ダース以上の
子供に恵まれました。
ヤースナヤ・ポリャーナとは「明るい林間の空き地」と言う意味です。
現在でも、その地には子孫により建てられた博物館があります。


さてこの「戦争と平和」の長編ドラマは文庫本にしても六巻の
ボリュームでありまして、登場人物だけでも500人を超えるので、
誰が誰だか覚えるのに一苦労です。
主人公のピエール(ピョートル)はトルストイ自身を描いてるようです。


時は19世紀に入り、ナポレオンが皇帝の位に就きロシアに侵攻した時期
あたりから、この物語は始まります。


何人かの主人公の一人であるボルコンスキー公爵家の若きアンドレイは、
身重の妻に愛情のこもったお別れの挨拶も無く戦地に赴き、
侵攻してきたフランス軍に対し、自分もナポレオンのような
英雄になることを志していましたが、アウステルリッツ戦で
瀕死の重傷を負い、奇跡的に帰還して以来、考え方が一変します。
今の彼は「自分が悪と思う事を避けて生きる事」でした。


ロストフ伯爵家の若きニコライは従軍中、親友である上官のデニーソフの
善意の軍規違反の赦免のため、アレクサンドル皇帝に直訴すべく移動しますが、
途中荒れ果てた野戦病院に居るデニーソフを見舞い、死臭漂う劣悪な環境下で
生死の境をさまよう傷病兵達を見た事が脳裏に深く刻まれます。


やがて迎えたロシアに不利な講和条約。
講和に浮かれて話す同僚の将校「もう少し頑張ればナポレオンに勝てたんだ」
と言う言葉に、ニコライは「君達が判断する事じゃない!」といきり立ちます。
「俺達はアレクサンドル皇帝に死ねと命令されれば死ぬんだ」。
ニコライの脳裏には戦いの犠牲となり、薄汚い病床で苦しむ兵達の
姿がありました。


貴族のあちこちの邸宅で催される贅沢なパーティー。
悲惨な戦場、或いは質素な労働者階級の生活。
トルストイはこれらを対照的に描きながら、物語を進めていきます。