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☆ NHK大河ドラマ放映中。小栗旬、北条義時役好演。

題 名: 義時 運命の輪
整理番号:E-25    
ジャンル:人  伝
読んだ時:令和 4 年 84才☆     
著 者: 奥山景布子
出版社: 集英社文庫
          


 内容・感想:
目下NHK大河ドラマ放映中の「鎌倉殿の13人」。
北条義時のストーリーです。
令和4年のお正月から始まっています。
テレビのほうは源頼朝が伊豆の蛭が小島に流されて北条家に潜り込み、
監視役の伊東祐親(すけちか)に探し出されて、女装で義時の馬の尻に乗って
脱出するシーンから始まっています。
義時役は人気俳優の小栗旬、頼朝役は大泉洋です。


この本のほうは、それより後の石橋山の戦いからです。
頼朝が初めて挙兵し、平家方の大庭景親に敗れ、這々の体で敗走する
ところからです。
この後、頼朝軍は船で房総半島に逃れ、その地で坂東一の大軍を持つ
上総広常を味方に付け、再び相模に攻め上って着実に足固めをして行きます。


これら一連の史実は「吾妻鏡」に因るところが多いのですが、義時の
奥さんについてはテレビドラマと、この本では一寸違いがあります。
テレビでは最初の妻は頼朝の監視役の伊東祐親の娘で、女性への
手の速い頼朝との間に子を成していた新垣結衣扮する八重です。
本のほうは、頼朝に仕えていた侍女で泰子、召し名を「阿波の局」と云います。


何れにしてもこの最初の妻は亡くなり、後添えはこれも頼朝のお下がりで
美子、召し名を「姫の前」と言いました。
後添えとは言え正妻です。
この「姫の前」はとても美人だったようで、後に御家人争いの中で
「姫の前」と離婚の已む無きに至った義時はとても辛かったようです。


義時の息子の方だけを見ていくと、「阿波の局」との子は長男泰時。
「姫の前」との子は次男朝時(ともとき)、三男重時。
そして「姫の前」との辛い離別の後、継室「伊賀の方」との間に四男実時。
しかし意外や意外!!!実時は四男にあらず。
後に、「姫の前」の遺言で義時を京都から遥々訪ねて来た源の輔通は
義時の子でありました。従って実時は五男だったと言う訳。
更に言うなら、次男朝時は頼朝の種だったとか。
まあ、いろいろあります。


文中よく出てくる言葉で、「某」「妾」は何と読むかお分かりですか。。。。
例えば「若、某も伊豆へ行かせてください」
これは義時が父母を伊豆に追放する折りの、家来の藤馬の言ですが
「それがし」と読みます。


「分かった。そなたらの良いように計らえ。妾は何も知らぬ」
これは政子が、修善寺に病気治癒の為と言う事で、押し込めていた
長子頼家を義時に暗殺指示した時の言葉ですが、
「わらわ」と読みます。


ここで、当時の権力者たちの薄情さに愕かされます。
政子は自分の腹を痛めた実子である頼家を殺させるのですよ。。。。
尤も、ハズの頼朝もそれに輪をかけて薄情でして、
娘の大姫と表向きは許嫁として預かっていた、木曽義仲の
長子義高ですが。
義仲を殺し、義高も殺してしまいます。
さらに平家追放のヒロインであり、木曽義仲征伐の功あった
弟の義経、従順な頼義をも殺させるのですから、非情の極みです。


ヒーローの北条義時は北条義政の次男坊。
長男宗時が戦死したので家督は義時に筋として継がれるはずなのに
京より嫁いだ若き義母との子に継がされそうになったり、
頼朝の急死に接し、自分の鎌倉殿へのご奉公もこれで終わりになる
などと感傷的になったり、政権への野望はまだこの時点では
ありません。
強き姉の政子の呼びかけ。。。と言うより強制で、意欲を自覚していく
ようです。


そしてついに二代将軍頼家を葬り、実父と継母を幽閉して
二代執権の座を固めていきます。
鎌倉幕府を共に築いた御家人仲間たちをも、次々と攻め滅ぼして
いくのです。
ついには、承久の乱により朝廷も武力制圧してしまうのです。
正に武家社会の完成です。